2009年10月27日火曜日

ざっくり再現 事例1

2次試験を事例別にざっくりと振り返りたい。

再現答案を作るわけではないけれど、事例文を見て、何を・どのように考えたかを記しておくことには意味があるだろう。

ということで、さっそく事例Ⅰから。ちょっと長くなりそうです。

手順は、
  1. まず問題文を読む。「出題趣旨=問われる能力」を大まかに決める。例えば、環境分析能力が問われてる、など。問題文からまだ見ていない与件文を何となくイメージしておく。
  2. 次に事例文を読む。
  3. 問題文と事例文を往復しつつ、第1問から第5問まで順番に解答を記述していく。
といったごく普通のパターン


第1問(配点20点)
 F社を買収する以前のA社、およびA社に買収される以前のF社は、それぞれW市周辺で有力な菓子メーカーであった。和菓子、洋菓子といった取扱商品に違いがあるものの、A社とF社の強みには、どのような違いがあると考えられるか。150字以内で述べよ。

考え:
 単純に「それぞれの強みは何か」が問われているのではない。「違い」が問われているので解答の書き方に注意する必要があるよね。ということに注意して与件を読む。

 F社に関する記述は7段落目のみ。強みは「菓子職人の技術がその評判を支え」以外見当たらない。「違い」を問うくらいだから、比較対象となるA社の職人技術は低いのかを与件から探してみる。そうすると、「社外の菓子職人やコンサルへの依頼」を見つけることができた。なので、A社に対するF社の強みは、菓子職人の技術力。

 今度はA社の強みを探す必要があるよね、ということで与件を見ると、F社の弱みを見つけることができる。売り上げの落ち込み、人員整理、後継者問題、事業継続断念など、経営陣の舵取りが甘い。反対にA社の社長は成長志向が強く、押せ押せドンドンで大都市進出売り上げ増加。なのでF社に対するA社の強みは、社長の経営戦略立案能力と事業推進力。

違いの本質は 経営陣主導の事業推進力 と 現場主導の事業推進力 ということなのだろう、と考えながらまとめた。


第2問(配点20点)
 金融機関の後押しがあったにもかかわらず、当初、A社社長は、F社を傘下に収めることに対して、積極的、前向きではなかった。その理由として、どのようなことが考えられるか。F社が直面していた財務上の問題以外で考えられる点について、100字以内で述べよ。

考え:
単純に考えると、「A社社長から見て、F社と一緒になったら嫌だよねー」という点を挙げればいい。
  • W市内で店舗が重複しているからカニバリゼーションが起きる。店舗整理するとなると人員削減も必要だし、従業員のモチベーションが下がるわ。
  • 合併するのだから、組織文化の親和性問題があるよね。F社は菓子職人の力が強い組織文化だと予想できる。A社は違うのでぶつかり合う可能性がある。
  • F社はW市内に店舗併設工場が2カ所ある。A社もW市内に工場を1つ持ってるし、生産体制を考え直さないといけないよね。
ということで、収益性、生産性、組織文化、3つの視点からまとめた。ちょっと変な切り口だなあ。


第3問(配点20点)
 A社がF社を傘下に収めた結果、買収されたF社の従業員に比べて、買収したA社の従業員のモラールが著しく低下してしまった。両社の人事構成を踏まえた上で、その理由について、100字以内で述べよ。

考え:
注意すべき点は
  • 「モラールが著しく下がったのは、買収した側のA社」、
  • 問題文にある「両社の人事構成を踏まえた上」
の2つ。

両社の人事構成を与件から探し、自分が注目した点は以下
  • F社の工場1つ閉鎖 F社の菓子職人をA社の向上に配置転換
  • 売り場の統合整理 最終的にA社とF社の従業員40名程度の人員整理
これらから最終的に解答に書いたことは
  • 買収した側のA社従業員まで人員整理の対象になっていること
  • 合併にあたり、A社従業員に対して動機付けが行われていない
  • 菓子職人の影響力が強かったF社の組織文化とA社の組織文化がマッチしていない


第4問(配点20点)
 A社社長は、生産体制を見直す際に、F社出身のベテランの洋菓子職人をA社工場の責任者に任命した。こうした施策を講じることによって、どのような成果や効果を期待したと考えられるか。100字以内で述べよ。

考え:
「期待される成果や効果」が問われている。与件文から、合併前にA社が困っていたことが書いてあったな、と思い出して探す。
  • 販売体制や生産体制の整備などで新たな対応が求められた。
  • 新作菓子を生み出す生産体制の整備が課題
  • 卓越した商品開発のノウハウが備わっていたわけではなかった
これらが、F社出身のベテランの洋菓子職人をA社工場の責任者にすることで解決できるのだと解答に書けばいい。


第5問(配点20点)
 現在、A社は、地元市場の不信と、景気低迷に伴う大都市圏事業の縮小といった厳しい経営状況に直面している。急速な業績回復が期待できない中で、短期的に売り上げを増進されるための具体的施策について、中小企業診断士として助言を求められた。どのような助言に行えばよいか、150字以内で述べよ。

考え:
「短期的に売り上げが増進させる」「具体的施策」がポイントなんだろうなあ。で、かつ人事組織に絡めて描く必要がある。
短期的に売り上げ、っていうくらいだから、物を売らないとね。と言う視点で与件から使えそうな部分を探す。W市店舗、大都市店舗、物産展、ネット販売。そして最終段落「大都市のデパート・スーパーに当初から投入していた商品の売り上げに支えられ」。これはW地区産の原材料+市場やし好の違いに考慮した創作菓子である。

ということで、具体的施策は「物産展を開催する。」に決定。
理由として
  • 過去に物産展の経験
  • 創作菓子が売れている
  • W地区特産品、生産農家の知名度
  • インターネットと連携して販売
  • イベントを通じて組織文化が形成される、従業員の士気が高まる
これらを付け加えてまとめた。

4 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

同じく、本年度2次を受けたものです。

受験機関の模範解答読みましたが、
いまいち納得いかず、自分のほうがいいと思っていました。
が、
第5問
「物産展を開催する。」には恐れ入りました。なるほど。
「かつ人事組織に絡めて描く必要がある。」
という部分は非常に重要だと思います。
受験機関はインターネットでの戦略一辺倒ですが、組織の統合を進めてゆく施策としては弱いと思っていました。

私はA社とF社を横断する、
短期解決型のプロジェクトチームを結成、
和洋折衷の新製品開発し、
インターネットで全国販売するという流れで、組織の融合、一体化、統合を図るとしました。
イベントを通じて地域との密着度が高められ、新たな組織文化が形成される、と、地域のほうをフォローできれば良かったのだなあと思いました。
参考になりました。

第一問は、経営陣主導の事業推進力 と 現場主導の事業推進力 ですか。
私は、活性化した強固な組織文化VS職人をコアとした専門技術にしました。
目標の共有度の高さ、貢献意欲の高い社員、社内外でのコミュニケーションの活性度の高さが
強固な組織文化として形成されているという、思い切った解答にしました。
自分では気に入ってます。


第2問は収益性、生産性、組織文化、3つの視点は、同じ感じだと思います。
①組織面で組織風土の融合が困難、

②コンセプト面で、和洋の菓子の相違、

③店舗立地面で、地域内での重複



第3問

ここも、あなたの解答は素晴らしいですね。


私は
A社の正社員は24人、F社は30人のため、
両社の貢献度と力関係のバランスが取れておらず、
経営体質強化の話し合いの際に、A社社員の意見が通り辛く、
対立が発生

って横道に行ってしまいました。

第4問は、
生産面の話を入れませんでした。
両社の仲介者として、両社社員のそれぞれの目的、役割認識、現実理解等の食い違いによる対立を緩和させる成果を期待した。将来的に、部門の壁を低く、風通しを良くし、A社への組織文化の一体化と融合効果を期待した

と、またまた組織のみで答えてしまいました。でも半分くらいはもらえないかなあ、と。

感心しましたので、お返事しました。

kaz さんのコメント...

コメントありがとうございます。
自分の残したブログ記事が少しでも誰かの役に立てたようで、素直に嬉しく思います。

私は一般販売書籍による独学で通したため(模試も受けず)、自分の解答に対して他の方から意見を頂くのは今回が初めてになります。恥ずかしい話ですが少し胸が熱くなりました。本当に感謝します。

私も予備校の解答をいつか確認しましたが、解答に至るまでの思考が書かれていないため、流し読みして終わりとしました。

診断士協会から出題の趣旨は発表されますが、模範解答や採点基準は発表されませんよね。自己採点するにも難しく、12月の結果発表をただ待つばかりです。

事例1の第5問で私は「物産展」と書きましたが、「ネット販売に力を入れる」でも良く、得点に関係するのは「幾つかの案から、なぜ物産展を選んだのか」「なぜネット販売なのか」を説得できる要因が解答に記されていることだと思っています。

dai さんのコメント...

同じく、10/25の2次を受験いたしました。今年が初受験で、現場ではあがってしまいました。

私は以下のようにまとめました。

第1問
A社→市場志向的=嗜好や市場に配慮した商品の開発、成長志向のもと事業拡大をはかったことなど
F社→技術志向的=創業当初からの職人の技術が評判

もう少し、組織事例を意識した解答にするべきであったと反省しています。

第2問
経営資源の重複→第8段落の記述をもとに、店舗や工場、人員等の資源重複が原因である主旨でまとめました。

第3問
A社の非正規社員の割合が高く、かつ買収した側のA社の非正規社員の多くが人員整理の対象となったためと考えました。

第4問
第6段落の記述をもとに、A社の経営課題である商品開発体制の整備を実現させるため、F社の職人の技術力を生かし新作菓子を定期的に生み出すことをねらったものである主旨でまとめました。
今思えば、組織事例であることを意識して、後任の育成にも触れておけばよかったと思っています。

第5問
これは正直わからなかったので、予件分で使えそうなものをかたっぱしから列挙しました。結果、完全にマーケ寄りの解答っぽくなってしまいました。

インターネット販売の強化
地域の特産物のインターネット販売
物産展のノウハウの活用等によりF社商品を大都市圏で販売する
などです。

いろんなところの解答を見ていると不安で仕方ないです。
いずれにせよ、皆さんで合格できることを祈ります。

kaz さんのコメント...

daiさん、コメントありがとうございます。

初試験は緊張しますよね。特に今回の事例1 第1問は定番の「強みは何か」ではなく「強みにはどのような違いがあるか」ですから、どの受験生も解答の表現方法などで悩まれたでしょう。その後の問題に影響が出た方もいたのではないかと思われます。自分はかなり慌てました。

「年に1回の試験、努力もしてきた。絶対に失敗したくない!」と思うほど焦りも出やすくなりますから、精神のコントロールも含めた受験対策が必要なのでしょうね。

私も皆さんで合格できることを祈ります。

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